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村井智 個展

"flesh and blood and love."

 

大橋会館

OPEN

2023 9/7 木 - 9/18 月祝

12:00-19:00

村井は現在東京を中心に活動するアーティストです。自身の描く深層心理的なビジュアルイメージと向き合った作品を多く描いています。娘の誕生を経て、音楽、映像、ビジュアルイメージ、インスタレーションなど、自身が今までに創って来た様々な手法が混じり合います。今回は自身の宗教観に向き合った作品群が並びます。

 

以下、展示会場でのみ公開していたステートメントです。

 

 

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「血と肉と愛と」

幼い頃に傍にあった「真理」というものを「不道徳」に興じるためにあっさり捨てた。

僕は読まれたくない手紙を描いた。読めてしまうと「真理」にしか救えない人たちを傷つけてしまう気がするからなるべく読めないようにした。

真理や、社会や、家族や、etc。大きな何かを駆動させるために生きることは僕には出来ない。

しかし真理も、不道徳も、読まれたくない手紙も、見つけられたコンドームの空き箱も、近くの誰かの愛によるものだった気がする。

 

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真理

幼い頃、僕の傍には聖書による「真理」と呼ばれるものがあった。ある時「隣人を愛せ」と聖書から教わったが、またある時には「異教徒は悪魔の影響下にあるから交わるな」と教わった。

その後思春期を迎えた僕は、不道徳と呼ばれるあらゆることに興じるために悪魔の支配下に自ら進んで入った。その時に傍にあった真理をいかにも人間らしくあっさりと手放した。

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血と肉

キリストは自身の血と肉によって、人類の罪を全て背負い犠牲となった。それにより人類は一時的な赦しを得るための行為、つまり動物を殺して神に捧げることをやらなくなった。

赦しを得るための血や肉にはグレードがあって、罪を犯していない命のグレードは高い。なので、罪を犯していないキリストの命はグレードが高く全ての罪をも背負うことが出来たという。

最近そのことを思い出していると、僕らは血や肉の潜在的に孕む罪を見透かし「やあこの命は神の赦しを得るための犠牲にぴったりだ」と判別する目を当然持たないということが頭によぎった。その血や肉が聖なるものであるとか、罪を負っているとかわからない。だって神ではないのだから、不完全な人間なのだから、血と肉がもつ属性まで判別出来ない。

しかし情報社会で不完全に生きる僕たちは昨今、血と肉を見ずとも、想像出来る属性で多くを判断してしまう。それが人間なのだと言えばそれまでなんだけれど、属性なんてものはある日突然反転したりもする。良き隣人であったはずが、宗派の違いを目にすると突如悪魔の支配下にある悪い人間へと変わる。

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両親と僕と読まれたくない手紙

厳格なクリスチャンである両親のことが頭に浮かんだ。僕は不道徳に興じるために、何より自分の思うように生きるために悪魔の側に下ったわけだけれど、僕を厳格さに基づいて攻撃したりはしない。神側/悪魔側の属性を二元論的に断ずるならばそうはならないはずなのに。いや、タバコはやめなさいとかいまだに言われるか。半分それも教義に由来しているけれど、先に述べたような一つの属性で判断されている感じはない。


神/悪魔のような二元論的な属性の差異や、立ち位置の違いから見える矛盾を正確に伝えると相手を傷つけてしまうことがある。なので、傷つけたくないから正確には伝わらないで欲しいと思うことも多かった。でも言葉が正確に伝わらないからといって、それはコミュニケーションが取れないわけではないし、さらに言うと崇拝する対象が正確でないから相手の幸せを祈れないというわけではない(折り鶴がそうであるように)。

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僕はまた読まれたくない手紙を描くことにした。より読まれないように、でも自分で描く「血と肉」が神聖であるかまたはそうでないかを判別できたり(自分で描いた故に)出来なかったりする事を、自他の「愛や正義」に触れる度に思い出せるように。そして正確でない神仏に人の幸せを祈るために。


だって人間だし、あなたも僕も。

村井智

1983年広島生まれ。
東京を拠点に活動する広島生まれのアーティスト、音楽家、映像ディレクター。
2008年にCEKAI井口らとTYMOTE inc.を設立し、音楽をはじめ色々担当する。
2013年、2014年にTYMOTEにてD&ADやNYADCなどの広告賞を受賞。
2016年にアーティスト、音楽家、映像ディレクターとして独立後、石野卓球「Rapt in fantasy」KREVA「嘘と煩悩」MVなどを手掛ける。
2019年に溜まり場/アトリエ/音楽スタジオMURAIMURAを設立。
2020年個展「BLESS YOU」を半蔵門ANAGRAにて開催。被曝3世、宗教2世、家族という自身の底にあるテーマから「読まれたくない手紙」を制作。
短編映画「忘れたフリをして」で色々担当。同作がD&ADにてWood Pencil受賞。翌年D&ADでサウンドデザイン部門で審査員を務める。

元TYMOTEでIQ3の村井村村長。

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2023年9月、2019年にDOMMUNEでのセッションきっかけで生まれた「IQ3」のフルアルバムがA.N.Dからリリース

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