7/2からANAGRAも通常営業が始まります。
1発目の展示は針谷慎之介の個展。彼の作風は彼自身が影響を受けた漫画やアニメから着想を得、鉛筆で細部まで仕上げる精密画です。「現実には存在しないモチーフをまるでそこにあるかのようにリアルに表現する」というこの矛盾したスタイルは硬派でありながらとてもポップでキャッチーで観る人を選びません。なぜそんな作風になったのか、生い立ちや絵を描くことへの想いなどインタビューしてみることにしました。彼にとっても初めてのインタビュー、是非読んでそして展示に足を運んでみてください。

針谷くんのスタイルを簡単にいうと?

紙に対して鉛筆でダイレクトに描いてます。あんまり筆は使ってないです。

絵はいつから描いてるんですか?

昔から絵は描いてましたけど、作家として描いてるって認識があるのは22歳くらいの時からですかね

昔ってどういう人だったんですか?

昔は…まあ半グレっていうか…(笑)学校行くのも、コンビニ行ってジャンプとヤンジャン立ち読みして、一服して、「そろそろいこっかなー」って思ったら学校行く、みたいな感じでした。バックの中には枕と弁当しか入ってなくって、もう学校行っても寝るだけ、みたいな感じでした。

そこからなんで美大に行こうと思ったんですか?

そろそろ授業出ないと卒業とか進学とかやばいぞ、って時期が来てちゃんと学校行き始めたんです。ちょうど僕がサボってる1、2限が美術の授業だったんですけど僕が学校行き始めたタイミングで美術の先生が妊娠しちゃって。その代わりにその先生の旦那が教えに来たんです。僕はその先生を「ダンナ」って呼んでで、そのダンナが美術の時間に僕が描いてる絵を見て「君は見えないものが見えてる」って言ったんですよね。今考えたらかなりやばい発言なんですけど、そのとき僕もバカだったんで、「マジすか」みたいに調子に乗っちゃって。そのダンナが「君は絶対美大行った方がいい」って行ってくれて美術進学の推薦状みたいなのを僕の親に書いてくれたりしたんですよ。当時僕八百屋でバイトしてたんですけど、そこに多摩美の生徒が来たりとかして予備校の情報とか教えてくれたんです。

なんか流れとか状況とか、マンガの第1巻みたいな感じですね(笑)

バイクと免許が欲しくて八百屋でバイトしてたんですけどそのお金で親に美術予備校行かせてくれって頼んで...全然足りなかったと思うんですけど、それで行かせてくれました。

大学入ってからはどうでしたか?

僕が思った大学ではなかったんですよね。グラフィックデザイン学科だったって言うのもあるんですけど、なんかみんな真面目すぎて、なんかもっと美術とか技術に興味あるのかなって思ってたんですけどそんなことないし、もっとスキルがある人たちがいるもんだと思ってたらそんなことなかったんですよね。多分そういう人たちもいたんだろうけど…

特にデザイン科っていうのは大きかったのかもしれないですね、デザイナーは商業的な部分を学ぶところだし。

そうですね、それでつまんねーなーってフラフラしてて、そんな頃にたまたま入った渋谷区神宮前にある『shop51』という、月曜美術倶楽部 (注:1)っていうのをやってるハードコア系のアーティストたちが集まってるお店があって。そこでいろんなアーティストに出会ったって感じですね。なんか自分が道を選んできたわけではなくて、結構流れるままに生きてきたらこうなったって感じが近いです。

注:1「月曜美術クラブ」

渋谷区神宮前にある『shop51』に、不定期でさまざまアーティストが集まり、美術を楽しんだ後、酒をのむ」というキュートなコンセプトを掲げたアート業界の部活動

今回の展示の話になるんですけど、今回の「キャラクターの手を細密に描く」っていう表現に至ったのはどういう経緯なんですか?

予備校時代に磯江 毅っていう作家の細密画をみて「これやばいな」って思ったのが大きいです。小さい頃はドラゴンボールとか遊戯王とかの模写はしていました。予備校の頃からデッサンがすごく好きで、とにかくものをリアルに描くっていうのが好きでした。あとは漫画はストーリー考えられないんで。(笑) いわゆる世間的なアートとか美術っていうくくりになっちゃうとガキが見ないっていうか、美術とかが何もわからない人が見て共感してくれたり面白がってくれたりとかするものを作りたいなっていうの想いはありますね。

注:2「磯江 毅(いそえ つよし)」

大阪府出身の日本の画家。徹底した写実表現で知られる。

その想いは月曜日美術倶楽部のアーティストの人たちの系譜みたいなことはすごく感じますね。KOUさんもキャラクターをモチーフに使ったりとか、それこそ針谷くんの言葉で言う「ガキが見てわかる」というかキャッチーさが強いですよね。見ている人のことは気にして描いているんですか?

もちろん最終的には考えるんですが、動機はそこではなくって。誰が見てもわかるっていうか「高校の頃に半グレだった自分がかっこいいと思うかどうか」っていうのは一個判断基準としてあると思ってます。「あんまり頭が良くなくてもわかる」みたいな…「果物が綺麗に書いてあるようないわゆる西洋画」よりも「自分の好きな漫画のキャラクターをリアルに描いた」の方があの頃の自分はかっこいいと思うんじゃないかと。

 

デッサンって、「実際にあるもの」を如何にリアルに描くかっていう再現するものだけど、針谷くんの場合は再現じゃなくて「そもそも架空のもの」を「リアルに見えるようにしていく」っていう作業だからすごい不思議ですよね。再現っていうかよりリアルに表現していくみたいな。どうやってモチーフ決めてるんですか?

アニメのワンシーンだったり漫画のワンシーンだったり、それまで曖昧な設定だった質感が演出の中で見える瞬間があるんですよね。いきなり毛が逆立つ表現が出てきたりすると「あ、そこ毛なんだ!」みたいな。(笑) どのモチーフも僕が描いてる指紋とか肌の質感とか情報量がわかるほどアップになったりとか、そもそもアニメや漫画なので結構自分で想像して質感決めたりしています。質感の置き換えというか、トカゲとか、麻の布とか実際に存在している質感で近そうなものの資料を見ながら描くこともありますね。最近だと映画化されるときにリアルなCGで実写版になったりするんですけど、僕はアニメの2Dのやつを見て描いてます。なので実写版の映画と質感違ったりとか、僕なりに質感を設定して描いてます。

1枚描くのにどれくらい時間かかるんですか?

集中してれば一週間ぐらいですね。でも僕飽き性なので、途中で違う絵とかペン画描いたりとかしながらバランスとっています。今回の展示で並ぶものは一番古いもので2014年12月とかなので5年半ぶんくらいの作品ですね。

なんでモチーフに手を選んだんですか?

例えば顔だったとすると、他の人の印象と変わっちゃうんじゃないかなっていうのもあるし、あとは顔リアルにすると気持ち悪すぎるかもなーっていうのはあります。キャラクターって基本的にリアルに描いたらキモいと思うんで(笑)

今回の展示は本来コロナ前に開催されるはずだったんですが、延期になってタイトルが「WE ARE THE WORLD」これについては?

これはコロナの前から決まってたタイトルなので本当に偶然でびっくりしてます。全然こんなことになるとは思ってなかった。WORLDっていうのは僕の頭の中って意味で、WEっていうのはモチーフのキャラクターたちのことって意味です。だから世界平和みたいな大きい意味ではないんですけど…意外と並んだらそういう風に見えるかもしれないですね(笑)

この手のシリーズは何枚まで描こうっていうのはあるんですか?

特に決まってはいないんですがマイケルジャクソンの「WE ARE THE WORLD」は確か参加歌手が38人とかだったので、38枚は描こうかなと思っていますけど(笑)

じゃあもはやこれはシリーズ名になってるってことですね!どういう順番で描いていくんですか?

描きたいところから集中的に攻めていきます。いいなって思いながら手の方ガンガン描いてたら「おい、こいつの洋服の質感描くの超大変だぞ…」ってなったりします。

鉛筆にこだわりはあるんですか?

あんまりこだわりないんですよね…もちろん硬さは使い分けるんですけどメーカーとかは特に気にしてないです。4B~4Hくらいで描いてます。紙はケント紙に描いてます。

ケント紙!!???

ケント紙ですね。理由はデッサンをしてるときに画用紙だと、ざらっとした紙の質感が気になってきちゃって、なんか偽物感を感じちゃうんですよね。「これは紙に描いたものだ」みたいな。だからなんの質感もフラットでつるっとしたケント紙の方がいいんです。丁寧に扱わないとムラになっちゃうし、正直大変なんですけどね。単純に自分の絵を舐められたくないっていうのと…あとは僕なんかが簡単にお金なんて稼いじゃいけないっていうのがあって、わざわざケント紙に書いてたりとかっていうのはあるっす。

ちょっと自分に対する枷(カセ)みたいな部分もあるんですね!鉛筆で描くっていうのにこだわりがあるんですか?

いや、今は鉛筆が自分にマッチしてるからっていうだけで、立体だったりとか、カラー表現とかもやりたくなったらやるんだと思います。当分鉛筆だとは思いますけど。

最後に一言お願いします!

とにかく僕の絵は生で見て欲しいです。SNSで見て満足しちゃう人もたくさんいるんですけど、とにかく生で見て欲しいので来て下さい!ありがとうございました!

針谷慎之介  / HARIYA SHINNOSUKE

「We Are The World」

ANAGRA

東京都千代田区平河町1-8-9 地下1階

https://www.anagra-tokyo.com/we-are-the-world

2020 7.3(Fri)-7.12(Sun)

open

weekday 15:00-22:00

holiday 14:00-21:00

<ご挨拶>

この度ANAGRAでは、針谷慎之介による個展「WE ARE THE WORLD」を開催致します。 針谷は東京を拠点に活動しているアーティストです。彼の作風は彼自身が影響を受けた漫画やアニメから着想を得、鉛筆で細部まで仕上げる精密画です。硬派でありながらとてもポップでキャッチーで観る人を選ばないのは「美術に興味のなかった昔の自分が、かっこいいと思えるものを描きたい」という想いからです。

 

今回の個展では2014年頃からライフワークとして続けてきたキャラクターの「手」が並びます。彼の言う「WORLD」とは彼自身の中身であり、それを作り上げるのがアニメやキャラクターなのです。

 

全世界に巻き起こった未曾有の事態で延期を余儀なくされ未だ続く混沌の中ですが、ANAGRAとしてリスタートの個展のタイトルが奇しくも「WE ARE THE WORLD」。何か起こる予感です。是非生で体感してください。皆さまのご来場を、心よりお待ち申しあげております。

 

<statement>

漫画・アニメ・映画・ゲーム等の空想上のキャラクターは、それらを鑑賞した時やプレイした時、確かに自分の頭の中に存在していた。

もはや彼らは、自分にとってリアルな存在だったと言える。

 

彼らにリアリズムという表現方法で、本来見えなかった毛や皮膚などの質感を持たせ存在感を与えることを試みた。

 

 

<Profile>

針谷慎之介/Shinnosuke Hariya

 

ストリートカルチャー、ジャパニーズカルチャー、漫画、アニメ、ゲーム、映画などから着想を得て、主に鉛筆を使用し作品を制作。国内外で展示に参加する。そのほか、アートワークの提供や、イギリス、アメリカでシルクプリントの販売を行なっている。 INSTAGRAM

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram

© A.N.D.TOKYO