2020年の3月以降、「自粛」とか「STAYHOME」というムードの中でSNSやオンライン通話で誰かと意図的に近況などを話す場を作ることはできますが、今までのように「あそこに行ったらたまたま会ってさ」みたいな偶然的な出会いが起きづらくなっちゃった。(そこが素晴らしいところなのに)
[ A.N.D.NOW ]では、日々モノを作ったり遊んだりしている人々に今どんな生活をしていて家で何を考え何を見ているのか。日本はどーなっていくと考えているか、少し話を聞いてみました。芸能人やニュースキャスターや専門家じゃなくって少し距離の近い、みんなの今。
人間は慣れるしいとも簡単に忘れてしまう。これから先の不安定な、だけど必ず来る未来の為に。覚えておきたいことがたくさんあります。
A.N.D.NOW #20人目はR領域こと山田卓生。様々な国をまたにかけ、ミュージックフェスティバル、ダンスパーティーのデコレーションや装飾や店舗の内装を手がけるアーティスト。グラスルーツの内装やブラックオペラのステージ装飾、フジロックや春風のデコレーションなど、気づかないうちに彼の作品を観ている人は多いはずだ。彼の作品では、いたる所から収集してきた植物やゴミ、工業スクラップなどをリサイクル素材として使用している。一つ上の意義を素材に持たせるサイクルはアップサイクルと言われる。それはアンチ資源浪費型社会のための創造、独自の自然観、旅行愛、共同作業をコンセプトにしているためである。今回コロナの騒動が始まった時はインドにいて、なかなか帰国ができなかったようで先日やっと戻ってこれたそうだ。インドは完全封鎖命令が発動されたり取り締まりが厳しいという報道があった。日本の状況とは全く違う中で数ヶ月を過ごしていた彼は今何を思っているのだろうか。
Q
お名前と、肩書きなど教えてください。
:: 山田 卓生 小学3年生の時からの「だみ」と言うあだ名で呼ばれる事が多い
::自称アーティスト
主にはイベントでの舞台美術、映像の美術、オブジェ製作、店舗内装など
Q
新型コロナウィルスによって、どんなふうに過ごしていましたか?
::去年の11月からオーストラリアに渡り、その後、今年の2月に21年ぶりにインドに行き3週間ほど滞在して帰国の予定でした。 コロナの影響でインド全土封鎖の為、帰国できず、インドにて待機せざるを得ない状況が続きました。
インド政府は世界の中でも強いロックダウンを全土に強いている為、基本的には自宅(借りている部屋)で待機状態となりました。同じ敷地に住んでいた、現地で出会った友人との共同生活となりました。ロックダウン始まって3週間経ったあたりから、警察のコントロールや自分達の気持ちの緩みも出てきて、違反なのだろうけど友人のところを訪ねたり、ビーチに行ったりもしていました。
日常生活
朝8ー10時ごろ起床 スムージーを飲み、庭の掃除、打ち水して、30分間ほどヨガ~ストレッチ。
その後製作活動、隣のお店の片付け手伝い、買い物、途中に昼飯を作り、食べます。夕方以降、夕飯の料理支度。食後は読書、マンガ、みんなで談話したり、映画見たり、釣りに行く事もあります。
12時ー2時ごろ就寝。 早寝早起きの生活したいのだが、夜も室温が高く、そして蚊が多い為、なかなか良い睡眠が取れない状態が続いた。
Q
コロナ前とどう変化しましたか?
::生活は規則正しく、健康的にはなっています。仕事しないし、遊ぶ場所もないので。
::ほぼ全て手作りの美味しくて健康的な食生活になりました。
アルコールの販売を禁じていた為、飲酒量も若干減り、ビールはほぼ飲まなくなった。地酒である、天然発酵のやし酒をローカルから買ってよく飲むようになった。
Q7
コロナ収束後の世界はどうなっていくと思いますか?
::世界的には
景気の悪化が進むと同時に,食料危機、紛争のリスクも上がってくると思う。
ベースに既に進行している温暖化気候変動があるので、それも同時進行なのでいろいろ大変になっていくと思います。短期的にはコロナ。それは意外に早く回復した様に見えるかもしれないが、そして来る次のパンデミック。そして震災やスーパー台風、長期的には気候変動のほうが世界に与える影響はとてつもなくでかい。コンビネーションのインパクトは世界の在り方を根本的に変えうると思う。
それらに対する政治の機能不全や格差社会に嫌気した国民たちが、もっとデモや自主的活動を起こしていく必要があると思います。政治的な事だったり、環境的な事であったり。
多くの人が望まなくても、必要が生じて5G、AI、遺伝子工学などは進展を続けていくと思います。
双刃の剣として、生活だけでなく、倫理観も変化するのでしょう。
::一般人レベルでは
経済的困窮に陥る人、社会の未来に希望を持てない人、自暴自棄になる人も増加しますが、お金でないモノに価値を見いだす人も増えていくと思います。
それは健康や健康的な生活、信頼できる他者や社会が存在する生活、自然環境が保たれている生活環境だったりします。
農業を始める人や都会を離れて田舎暮らしを始める人、食事や遊びにしても、ないモノは諦めて、あるモノで、より健康で楽しくクリエイトしていく人、政治の動向を注視したり、アクションをとるようになる人、企業で勤務するのでなく自分で商売を始める人などが増えてくるのだと思います。
それは311以降の動きに近いと思いますが、今回は全世界同時進行なので、この動きはよりインターナショナルで強い潮流になると思います。
::イベント、クラブなどは規制が溶け次第、ゆっくり回復していくと思います(願います)が、景気の悪化により、またはライフスタイルの変化で増えていくであろう遊ばなくなる人をどう戻して、取り込んで行く事が課題になると思います。
Q
ご自身の活動は変わっていくと思いますか?
::もともと個人で小規模で不安定な仕事形態、自由な生活をしていたので感覚的には準備はできていました。 仕事面ではイベントでの現場も多かったので、変わってくると思っています。イベントが減っている今年はまずは自分の生活を整えて、次どう動くか作戦を練ろうと思います。
海外や都市部から離れた場所にいても持続できる仕事をつくっていきたいです。
旅行中の為、素材も道具も限られたモノしかない状態でした。その中で集まるモノで何が作れるか、という挑戦でした。
その中で、日本で話題になってきたアマビエという妖精的?神様的?な存在を知りました。テーマとしては最適なのでそのコスチュームを作る事にしました。
Q
この状況(自粛/stayhome/人と直接会えない)みたいな中で何か今までと違うものは見えましたか?
::今まで経験し得なかった非日常期間をお試し体験した感じがします。(その究極は戦争や飢餓、大災害だと思います。)お試し、というのは世間が騒がされたほどの実害は先の大戦、過去の大災害ほどの規模ではないですが、近い未来に、より拡大した被害をもたらす災害があると想定しての事です。その時、いた場所、環境で個人の体験は大きく変わってくると思います。それによって見え方も変わるし、見るものも変わってきます。
個人的には非日常な時に人間の本性、人間関係が浮き彫りになってくるし、何が大切かわかってくるのだと思います。 もちろん自分に対しても自信を持てなくなってもきますが、結局信じられる自分を掴んで離さないようにする努力は必要だと思いました。
Q
ソーシャルディスタンス / オンライン通話 など物理的に会ったりできなくなったことでの精神的な距離感を感じますか?
::あまりないです。もともと1/4は東京、1/4は旅、1/4は現場、1/4は山の中の隔離した家での暮らしをしている為だからだと思います。
それはそれで興味深い実験と実践としてある種の面白みもあったし、静かな冒険だった。
Q
今の日本の状況をどうみていますか?
::帰国して1週間余りしか経ってなく、まだ隔離生活中なのであまりわかっていませんが、平和で、豊かで、綺麗だなと思いました。
と同時にまるでコロナ騒動なんてなかったんじゃないかなとも疑いました。もしくは全力でなかった事にしようという集団心理の作用があるのかも、とも。
しかし露呈した政権の無能ぶりと混乱までもなかった事にしてこれから進めるのは危険です。これを機に政治も産業も個人の行動も大きく変革していかなければ、自滅する速度が早くなっていくだけだと思います。
Q
今、どんなサービスがあったらいいと思いますか?
::もうあると思いますが、発展していくサービスとして
プライベートワークショップのサービス
工作だったり、音楽だったり、瞑想だったり、環境的な生活の知恵や整理整頓掃除のワークショップを個人家庭向けに行うサービス。
Q
今何か告知することやメッセージなどあればお願いします。
::1ヶ月くらいオーストラリアに行く予定が、漂流のような旅を選び、片道切符で渡航した結果、インドにてコロナで動けなくなりました。帰国までにフライトが5回も欠航しました。どうにか帰国はできましたが、結果的に自分の判断は間違っていなく、他のどこかでなくインドで良かったと思っています。
想定外の事が続き、期待は持てず、流れに身を任せる事も必要だったし。しかし希望は捨てず、チャンスがあった時に集中して動く為の気力と体力と戦略を養う事も必要だった。
人生の平凡さに、自身の孤独に、その行動の虚無と儚さに、に抗う
しかし同時にそれはそれで変更の効かない現実で認めざるを得ない真実で
自分が好き、嫌い言う事でない事を知る。
そして、制御の効かない混沌の中、
無力感を感じながらも好き嫌いと言うことしかできない事も知る
朝の味噌汁の香り 昼下がりの公園で揺れるブランコが起こすリズム
夕食時にテレビから流れる雑音に絡む扇風機のモーターの振動
それらが共鳴するコンクリートで固められた建物の中で
常に再構築を繰り返す世界の単純な結晶化
そこにおける自分の日常の任務にも、
私たちはまた好意と敬意を持って、存在する
同時に崩壊と創造を繰り返す、複雑な海の波、営み、
その中で発生する泡の様な、私たちの短い一生
そして様々に自分の人生を想像している泡たち
それぞれは別々の要素で、組み合わせは多様だ
よく見た生活の場面、死ぬまで繰り返される日常
その中の忘れられない名場面
ちょっとした冒険、躍動や勇気あふれた日々
微笑や哀愁を誘う美しい瞬間がほんの刹那、現れる
それは人生において、モチベーションをあげうる原体験 だったり、
もしくは たわいも無い、特に大きな出来事があった訳ではないが、
何故か、とりわけ美しく、愛おしいひと時、
またはどこか心地よく帰りたい時間(しかし、そこには決して帰れない)
その記録の為にスケッチを、撮影を、行動を、旅を、音楽やパーティーを、芸術を、愛情と生活の営みを繰り返し試行しているのが私たちの人生
私たち一人一人が 途方もない大きなジグソーパズルのピース
引き下がって見てみると、人間だけでなく
そこにいる動物や蟲たち ある植物や風景も 時間も
このパズルのピースであり、 その一つの角 ふち
そこに存在する同じ磁性を帯びた魂たち
枠組みは無い 完成もない 有機体の組み合わせ融合は果てしない
ただ構築し続けるなか 私たちパズルのピースは
その瞬間の繋がり響き合う音、瞬間の完成体の感触を感じる必要がある
完成は幻想 構築するベクトルにしか 美と笑いとリアリティはない 時はない
R領域
日大芸術学部在学中の90年代後半より、当時東京を中心にレイブパーティーを主催していたオーガナイズチームEQUINOXで雑用〜装飾スタッフとして活動を始める。
現代の資源浪費社会に問いかけるための作品づくりと旅とパーティーをコンセプトにフェス、イベントでのステージ、会場装飾やPVなど映像作品の美術製作、店舗の内装やオブジェ製 作、子供向けワークショップなど幅広い活動をしてきた。
海や山や都市のいたる所に注意を払い、素材を収集する。 家庭ごみ、産業廃棄物、金属スクラップなど無機質で人工的なものと植物などの自然のもの、古いものと新しいもの、それらを有機的に織り交ぜ、組み合わせ、不思議な造形物、舞台装置を創りだす。
ソロ活動はR領域名義。2001年よりアートチーム< R type L>も主宰し, 2007年より冬期は毎年、南半球オーストラリアに渡り、夏を追いかけて活動を続けている。