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この度ANAGRAでは、酒井建治による個展「front liner」を開催致します。

酒井は京都精華大学を卒業後、武蔵野美術大学院造形研究科美術専攻版画コースに在籍、シルクスクリーンの技法を使い作品を作り続けているアーティストです。

 

一般的にシルクスクリーンはTシャツのプリントなどに使用されることで広く認知されています。一つの図版を正確に量産する目的で発達した技術ですが、インクの粘度や刷る順番、微妙なズレによって見え方や風合いは変わってくる繊細な手法でもあります。

 

酒井の作風はCMYK(青/赤/黄色/黒)のみで構成されており、刷る順番によってその見え方や印象は変わり、計算からくる色のコンポジションや、偶発的に生まれる微妙な変化をコントロールしながら1画面を仕上げるため、一つとして同じ作品はありません。今回の展示はコロナでの休業期間を挟んで延期されていたこともあり、延期期間中に酒井は芸術の力とは何かと向き合い、当初のコンセプトやタイトルとは内容を変更し、本展を最前線の人を指す「front liner」と題しました。

東京での初個展前に、自身初のインタビュー。これを読んで、会場に足を運んでみて下さい。 

シルクスクリーンのアーティストだからペインターではないし、、肩書きはなんて名乗ってるんですか?

そうなんですよね、ちょっとなんて名乗ったらいいかわからないので今はとりあえず「アーティスト」ってことにしています

 

 

自分のスタイルについて簡単に説明してもらってもいいですか?

ドローイングをペンと紙ではなくてイラストレーター(PCソフト)の画面上でやっています。かさばらなくていんで、データで置いておけるのと大きさを簡単に変えられたりするのがいいんです。寝る前に描くことが多くって、寝る前に思い浮かんだことをイラレでわーっと記録しておく感じです。僕の作品は感情をモチーフにしていたりするので、その日のこととか嫌だったことをそこに全部発散して作品に落としてくようなイメージです。

 

自分の感情をカタチとして表現しているってことですか?

そうですね、勢いで一気にだーっと何十枚も書いていきます。そのドローイングの中で出てきた要素を組み合わせたり、コピペしたりして作品にしています。

 

どうやってそのスタイルになったんですか?

大学の時に友達がコンピュータールームで僕のイラレのドローイング観て「それいいやん」って言ってくれたり、先生に褒められたりとかして、その作品を版画展に出したら優秀賞もらえたりとかして、最初の作品で結構いい評価もらえて、それでもうこのスタイルでいこうってなりました。

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昔から絵は描いていたんですか?

僕四人兄弟なんですけど、全員画塾に通ってたんです。だから割と実家が絵とか芸術に対して理解のあったので幼い頃から絵を描くみたいなことは自然なことでした

 

なんで抽象的になっていったんですか?

最初からそうなんですよね。僕が画塾に行く前の絵はこれなんですけど、下書きとかしないで何も決めずにドンドン描いていくのが気持ちよくって。これをまた友達とかが褒めてくれて、それで絵が楽しくなっていったので高校2年生くらいから画塾通って、受験用のデッサン学んだりしてっていう割と流れできてますね。中学生の時に親とか先生から「あんたは芸大いきなね」って言われてたりしたので。

 

そうなんですね!今のスタイルになる何かきっかけとかはあったんですか?

画塾に通っている時期に僕がちょっと版画に興味あるのを知った画塾の先生が「授業サボってアンディウォーホールを東京で見てきたら?」って言ってくれて、それで東京まで見にいったんです。その時の影響が大きいですね!今まで何となく「芸術って暗い」ってイメージがあったんですがその展示見て「こんな明るくて楽しいのもあるんだ!」って思ってそこでシルクスクリーンやる、って決めた感じです。

 

 

ウォーホールがきっかけなんですね!

そうですね、あのカラフルな感じとか僕も作品作るときはカラーでやろうと思ったのもその影響が大きいです。ただ、モチーフとかには影響を受けていないので、あくまで手段として影響を受けました。たまに年配の方には「昔の看板みたいで懐かしいなあ」とか言われたりするんですが、僕は新しいと思ってやってたのに年配の人からはそう見えるみたいで。(笑)

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そういう意見を受けてアメリカンカルチャーを掘ってみたりするんですか?

いや、しないですね。もちろんみたりとかするのは好きなんですけど、「いいですね~」くらいで全然参考にしたりとか影響を受けたりってことはないです。

 

全ての画面が感情がモチーフなのですか?

寝るときって情報が入ってこないので、脳がリラックスしていてアウトプットしやすいらしくて、その時にアイデアが浮かんでることが多いので、昔は文字にしていたんですけどそれを今は全部カタチとして表現しています。

 

なるほど。カタチにしていくものはネガティブな感情が多いんですか?

そうですね、ネガティブなものが多いかもしれません。ネガティブなものは全部作品として放出してしまえばいいっていうのが自分の中にありますね。

 

なんか排泄みたいな感じですね(笑) ご飯食べて寝る、みたいな生活の中の普通に入ってる感じというか

そうですね、作品作る時に僕は悩んだことがなくって、自然に出てきたものを作品に落としてくっていう流れなので自然な感じです。

 

ポジティブなものは画面にならないんですか?

ポジティブな感情は自分の中にとどめておくので、やはりネガティブな感情が多いと思います

 

やっぱり排泄に近い感じですね(笑) イラストレーターでドローイングするときはペンタブなんですか?

いや、トラックパットですね

 

え!トラックパット!!(笑)

そうですね、四角描いて消しゴムツールで消したりコピペしたり透明にしていったりとかっていうのがデジタルのドローイングするメリットですね。

 

頭の中のイメージを画面上に再現していく感じですか?

最初は浮かぶ形があるんですけど、トラックパット上で自分の手の動きで偶然生まれたカタチとかに左右されたり、対話というか、ちょっと勝負している感じなんですよね。それを繰り返しているうちにバチっと決まる瞬間がくるのでそれまで動かし続けます。だからマウスにしたりしたらまた変わるかもしれませんね

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結構消したり、コピペはガンガンするんですか?

たくさん使います。それがいいところなので。アナログのいわゆる紙にペンでドローイングして、失敗を失敗に見せないようにしたりとか、その偶然生かすのも面白かったんですが、今はデジタルの方が面白いですね。

 

その作業を繰り返してると、自分の中のイメージにぴったりくる瞬間があるんですか?

あります。これだ!ってビッとキマる瞬間がありますね。

 

刷る色の順番の検証もデジタルで行うんですか?

いや、どのタイミングで刷る時に自分で決めています。僕は基本順番決めていて、マゼンタ,イエロー,シアン,ブラックの順番で刷っています。シアンのタイミングが結構重要で、シアン刷った瞬間にイメージがガラッと変わるので、後半にもってきててその瞬間が一番楽しいです。途中でこれはシアンすらなくてもいいな、とかそれは刷る段階になってから決めていますね。

 

なるほど。自分の作品をみた人に何か伝えたい、とかそういうものはあるんですか?

いや、見てくれた人の自由でいいと思っています!綺麗だな!とか。

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シルクスクリーンって、複製のために発展してきた技術だと思うんですが、全部一点物っていうところへのこだわりはなんですか?

そうですね、結構エディションで何枚か作ったら、とか言われるんですけど、僕は一点物がいいので、一つも同じものはないです。なのでシルクスクリーンはあくまで表現的なアウトプットの方法として使っているだけで、複製を目的に発展してきた技術かもしれませんが、僕としてはあくまで方法でしかないですね。

 

デジタルで描いた絵を手で起こすって作家もいると思うんですけど、それとはまた違うんですか?

そうですね、やっぱりシルクスクリーンって手法に最初に感動してしまったのと、自分にはこれが合ってると思うんです。

 

シルクスクリーンなのに一点物っていうのが面白いですね!最後に一言どうぞ!

どれも本気で作ってるんで、実物見てもらったら伝わるものもあると思います!ぜひ実物を見にきてください!

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KENJI SAKAI solo exhibition

“front liner”

2020 7.17(Fri)-7.26(Sun)

open

weekday 15:00-22:00

holiday 14:00-21:00

 

<ご挨拶>

この度ANAGRAでは、酒井建治による個展「front liner」を開催致します。 

酒井は京都精華大学を卒業後、武蔵野美術大学院造形研究科美術専攻版画コースに在籍、シルクスクリーンの技法を使い作品を作り続けているアーティストです。

一般的にシルクスクリーンはTシャツのプリントなどに使用されることで広く認知されています。一つの図版を正確に量産する目的で発達した技術ですが、インクの粘度や刷る順番、微妙なズレによって見え方や風合いは変わってくる繊細な手法でもあります。

酒井の作風はCMYK(青/赤/黄色/黒)のみで構成されており、刷る順番によってその見え方や印象は変わり、計算からくる色のコンポジションや、偶発的に生まれる微妙な変化をコントロールしながら1画面を仕上げるため、一つとして同じ作品はありません。

今回の展示はコロナでの休業期間を挟んで延期されていたこともあり、延期期間中に酒井は芸術の力とは何かと向き合い、当初のコンセプトやタイトルとは内容を変更し、本展を最前線の人を指す「front liner」と題しました。

激動の時代、人の感情と向き合い、抽象的でありながら確かな表現を求める若き作家の展示を是非目撃しに来てください。

 

 

<statement>

front linerとは(活動・闘争などで、責任ある立場に立つ)先頭、最前線の人のこと。現在の世の中で言うと、医者や警察のことを指す。

 

コロナや様々な原因によって気持ちが落ちてしまっている人が多くなっている。そんな人達の心を救えるのは芸術であり、だからこそ芸術家もfront linerとして人の心を豊かにするべきである。

私は自分の中に生まれた感情をドローイングとして表し、様々な形や色で浄化している。

作品の形や色を分解して制作していくように、鑑賞者も感情を分解し浄化していく。

私と鑑賞者の感情の共通点が面白さであり、相違点が個性である。

人の心を豊かにする方法は色々あるが、私に出来ることは(作品を通して)共感し、肯定すること。それは私だけではなく、誰にでも出来ることである。

 

 

<Profile>

酒井建治

1996年 京都府生まれ

武蔵野美術大学院造形研究科美術専攻版画コース 在籍

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