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2020年の3月以降、「自粛」とか「STAYHOME」というムードの中でSNSやオンライン通話で誰かと意図的に近況などを話す場を作ることはできますが、今までのように「あそこに行ったらたまたま会ってさ」みたいな偶然的な出会いが起きづらくなっちゃった。(そこが素晴らしいところなのに)[ A.N.D.NOW ]では、日々モノを作ったり遊んだりしている人々に今どんな生活をしていて家で何を考え何を見ているのか。日本はどーなっていくと考えているか、少し話を聞いてみました。芸能人やニュースキャスターや専門家じゃなくって少し距離の近い、みんなの2020年5月。

人間は慣れるしいとも簡単に忘れてしまう。これから先の不安定な、だけど必ず来る未来の為に。覚えておきたいことがたくさんあります。

10人目の[ A.N.D.NOW ]は、映像作家のHiroo Tanaka / DJ イヌミカク。

彼は現在ベルリン在住。日本在住の頃から映像制作と共にDJ イヌミカクとして活動しており、音楽シーンとの親交はとても厚い。活動を国外に移し、2016-2019年Boilerroomに所属、その後フリーランス映像ディレクターとなり現在に至る。多くのアーティストやミュージシャンが暮らすベルリン。メルケル首相の演説や文化シーンに対しての素早い対応についてはなんとなく知っている方も少なくないはず。そんなベルリンでのクラブシーンの現状や現地の生活について聞いてみた。

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朝に走りに行く滑走路跡です。晴れた日は最高。

Q

お名前と、肩書きなど教えてください。

Hiroo Tanakaです、DJ名であるイヌミカクとも呼ばれています。ベルリンで映像を作って暮らしています。

 

 

Q

新型コロナウィルスによって現在どんなふうに過ごしていますか?

起床時間から就寝までの平均的な時間割を教えてください。

自分の住むベルリンではロックダウンが2ヶ月くらい続いています。基本的にはコロナショックで新規プロジエクトは全くないのですが幸いコロナ前から続くプロジェクトの編集作業と、撮影済みのミュージックビデオのポストプロダクションなどをしています。

 

 

9:00 -10:30 起床して一時間、家か家の近くの空港跡地の超巨大な公園で運動してます。

 

10:30-17:00  

事務的な作業を自宅の作業部屋でしたり、家の掃除をしたりします。

お昼を食べて、そのまま自分の仕事もしたいところなのですが、2歳の娘と一緒にお絵かきをしたり、自転車で20分くらいで行ける森に一緒に行ったりします。

ベルリンには自転車で行ける距離圏内に、巨大な公園だけではなく森や湖、川もあったりしてソーシャルディスタンスを保って遊びに行ける場所がいっぱいあるので、ロックダウン前から週末にはよく行ってました。

 

17:00 - 19:00 ここで娘を片手でレゴとかであやしながら携帯ニュースをチェックしたり、読書したり、音楽を聞いたりしてます。

 

19:00- 23:00 ご飯を作って食べることが好きなので、気合を入れて作ります。娘も食べることが大好きなんでたらふく食べさせ、自分も食べつつビールを投入して一日置きにパートナーと交代で娘の寝かしつけをします。。

 

23:00- 3:30 仕事やDJの選曲の作業をする時間はここだけになるので気合で色々終わらしたい!、、、というのが理想です笑。

 

こんな感じなので仕事が全然進みませんが保育園が機能していない現在、クライアントさんの連絡も超遅いのでお互い許してあってる感じです笑

 

 

 

Q

コロナ前とどう変化しましたか?

コロナ前はベルリンにいる間は締め切りや撮影の準備に追われる日々だったし、フリーの監督業以外にも2016年くらいから2019年半ばくらいまで、Boilerroomという音楽系オンラインメディアの会社に所属していたので、多い時は月に3回以上飛行機に乗ってドイツ国外に撮影をしに行っていました。なのでベルリンにいるときはスケジュールやルーティンといった日々のリズムとは無縁の生活でしたね。子供が生まれる前はベルリンのナイトライフを存分に楽しんでいましたし。今は規則正しく1日をゆっくり振り返る時間をちゃんと持てるような生活ができているような気がします。

 

仕事では訪問した国の音楽のドキュメンタリー制作やフェスティバルなどの撮影監督して編集をする仕事をしていたので、情報を自分のフィルターを通して映像にしている感じでしたが、今は手書きの絵を題材にしたり、感情をテーマにしたり、内在的なテーマで表現的な自分の作品を作るようになりました。

あとはやっぱり娘とこんなに居れるなんて本当に幸せです。子供と音楽を聞く時間も増えたし、娘がエレクトロニカやアンビエント、さらにはヒップハウスやダンスホールも好きなことがわかったし!!

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Q

ベルリンは日本と違い「ロックダウン」という状況になったと思います。実際に「ロックダウン」とはどういう生活でしょうか?

 

ベルリンでは2月末にヨーロッパでパンデミックが起こった初期の段階から政府から外出自粛や警告がかなり大々的に行われていました。

その後3月の第2週末までに何も変わらなかったらロックダウン!と政府が警告したんですが、その週末が快晴で暖かくなってしまって、公園が大盛況したんですね。

その日曜日にメルケル首相の説得力のある演説とともにロックダウンが始まりました。保育園など、行政はその方向性を指示されていたらしくその週末の金曜日には娘の保育園から恐らく保育園も閉まるだろう、と通達がありました。その直後に友達に車を出してもらいスタジオにパソコンを取りに行き自分のロックダウン生活も始まりました。

 

ロックダウンと言ってもイタリアの様に完全に外出を規制するものではありませんでした。例えば、スーパーなどは開いていましたし、ジョギングや二人以内での社交活動は許可されていました。なので自分も友人と森に出かけたり、娘と散歩したりという形でうまくバランスをとっていました。自分は元々ベルリンにいる間はほとんどの行動範囲が自転車で行き来できるサイズですし(ベルリンは環状線に包まれるエリアが新宿区ー豊島区ー渋谷区くらいのサイズ感です。)フリーの映像作家なので、撮影に行けない以外はいつも通りリラックスして家で編集したりしてたので楽しんではいました笑

 

 ただ、いつも社交的な生活をしていた方達は相当生活感が変わったと思います。中には音楽イベントやクラブが中止になったので大規模なハウスパーティーを企画して100万円以上の罰金を支払わないといけないパーティ好きな若者たちもいたと聞きました。あとは、自分の住むNeukollenというエリアはアラブ系ルーツの方達が多いのですが外や道で大人数でお茶や談話をするというカルチャーがあって、そこを警察に取り締まりを受けている光景も何度か見かけました。世代や国籍、職業などの背景によってもロックダウンという状況の受け取り方がすごい違っているんだな、という印象でしたね。

 

 

 

Q

ドイツが取っている対応とそれを受けての人々の反応を教えてください。

ご存知の方もいるかもしれませんがドイツではロックダウンが決定した翌々週の月曜日にはフリーランス及び自営業の方達に最高1万5000ユーロ (170万円相当)の支援金が配布されました。それもあって生活に対する不安を抱えながらのロックダウンを強いられる、という人は少なかった様に見受けられました。ただその支援金制度も少し不備があったり、申込サイトが壊れたり、もらえていない方もいたりして、完璧とは言い難いですが、それ以外にも職安的な立ち位置のジョブセンターからお金をもらえたり、子供がいる家庭には子供手当であるKindergeldが通常の200ユーロ (24000円)から400ユーロ(48000円)に引き上げられたり、コロナによって収入が減った人たちには総じてサポートが手厚いという印象はありました。メルケル首相の素早い対応と、力強い演説に対しても周りの仲間を含め、評価が高かったですね。

 

 

クラブカルチャーの現状を教えてください

クラブカルチャーは完全に休止してますね。Dj達はストリームでDJを放映してます。クラブはガーデンスペースがあるところはビアガーデンにしたり、色々策を練っている様ですが、ロックダウン2ヶ月立って大規模なイベントは8月末まで一切中止に正式に決まったので、これからどうなるかは、あまり誰も解っていない感じだと思います。

ヨーロッパのクラブカルチャーを支えていた格安航空会社も軒並み赤字で、今後潰れないまでも値段が上がることが予想されていて、ミュージシャン達が国間を容易に行き来できていたヨーロッパの過去の音楽シーンとはこれから変わっていく可能性はあると思います。個人的にはそういった中でドメスティックな活動を続けている音楽家達のこれからの動向は楽しみです。

 

 

 

 

Q

クラブカルチャーはどう変化していくと思いますか?

クラブ音楽業界で仕事をしていた身としては、また元に戻ってほしい、という気持ちはありますね。ただ、それは難しいでしょうし、現時点では誰にも解らないと思います。

 

そこでネガティブな事象だらけかと思えば、友人が勤務するhttps://schneidersladen.de/    

Schneidersladenというインディペンデント系のシンセサイザーを専門に扱う機材屋さんの売り上げが劇的に上がったり、お家で音楽を楽しんだり演奏する時間が増えたという側面もあると思います。なので、ベルリンのクラブの様な廃墟の地下を利用して爆音の中、隣のお客さんと汗を迸らせつつ体感して踊る、という様な音楽の楽しみ方とは違いますが、ある種の音楽ジャンルによっては、この期間に進化するのでは、と個人的には思ってます。

ベルリンで活動する友人DJ Die Soonに娘とお絵描きしながら作ったMV。

MCはNyege Nyege TapesのMC Yallah

Q

アーティストの友達が多いと思いますが、アーティストたちの生活や制作に向ける姿勢は何か変化があるでしょうか?

 

ここでは徒歩二分の場所に住んでいて毎日の勢いで会うDj Scotch Eggと、よく電話をする、Lepizigというベルリンから車で二時間程度の旧東ドイツの地方都市に住むKiki Hitomiさんを例に話題を挙げます。

(二人は Waq Waq Kingdomというバンドもやっています。)

 

二人は総じてこの期間を楽しんますね笑 もともとミュージシャンという方達は自己に対峙す時間が多いという意味では慣れてると思いますしね。

ただ、ギグやツアーがなくなって制作時間が増えて喜んでいる反面、旅先で出会うインスピレーションがなくなって寂しい、といった話もしていますね。

これも繰り返しになってしまうかもしれませんが、内包的なテーマで作品や音楽を作るという方向性になっていっている様な気がします。

 

 

 

 

Q

音楽や絵画などジャンル問わず「アーティスト」の人々の今の動き方、次のアクションはどんなものになると思いますか?

この状況で、そもそものクライアントの喪失や、社会情勢の変化などで仕事やフィジカルな表現の場を失ったアーティストさんも沢山いると思います。

その中で、今まで仕事と作品との線引きを強くしていた方達も含め、作品そのものを売ったり、映像を作っていた人たちなら自ら発信していく様な、今までより、もっともっと力強い個々の思いが入ったインディペンデントなアートや創作物が世の中に増えていけばいいな、と思っています。

 

 

 

 

 

Q

インターネットで見つけられるものでオススメのものはありますか ? リンクがあればそれも教えてください。

Netflixは以前はよく見てましたが今の状況にはテンション高すぎて自分の生活とギャップがありすぎて最近あんまり見てないですね。別の映画のオンラインプラットフォームで俗にいう単館系の映画が見られるMUBIというサイトに登録しました。毎日一本ずつ更新されていくシステムなのですがたまにもの凄いあたりがあるし、レンタルビデオや知らない作品をランダムに借りていくような感じで全然知らない映画に出会えるのでお勧めです。https://mubi.com/

 

音楽系ではレコード屋に行けなくなった今、バンドキャンプディグは毎日しています。アーティストにお金がほぼ直接行くシステムといい、今この状況で現存する音源購入先としては一番いいと思います。レコード屋さんももちろんサポートするべきだとは思います。  最近見つけたレーベルで面白かったのはNo Lagos Musicというフランスのレーベルで石を延々と叩きつける実験音楽のコンサートの恐らく手持ちマイクでしたと思われる録音を自作のコラージュでパッケージングしたカセットテープにして売っていたり、、意味わからないんですけど何か美しいです!

https://nolagosmusique.bandcamp.com/

Q

 ソーシャルディスタンス / オンライン通話 など物理的に会ったりできなくなったことでの精神的な距離感を感じますか?

日本人としてベルリンに暮らしていて、挨拶をここはハグで行くべきか、握手でいくべきか、みたいな余計な距離感の詮索をしなくなって良くなったとこは楽ですね笑

また、この期間に日本の友達だけでなくベルリンの友達とも電話をすることが増えました。いくら近距離に暮らしていようが、国を離れていようが心が落ち着く様な友人はいつも変わらないのだな、再確認しました。

忙しすぎる現代人にとってこの社会強制一時停止ボタンがいきなり押された、みたいな状況は、人と人との関係性を考え直せる様な、そういう好転作用もあるのかな、とは思いましたね。

 

ただ、一方でベルリンでクラビングを生きがいにしていたクラバーの若者達の自殺率が上がっている、という話も聞きました。悲しいですが本当に人それぞれなんですよね。

 

 

 

 

 

Q

最近何か買いましたか?

バンドキャンプでUONというベルリンのアンビエントのアーティストの音源を買ったり、森にいく為の水筒を買いました。

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2月中旬すでに中国ではパンデミックが始まっていましたが、コロナ前に実質最後に出張に行ったセネガルでの写真。セネガルはお客にご飯を振る舞う時は手でちぎって投げてくれます。今考えるとすごい距離感だ。

セネガルではBerlin Atonal とHonest Jon’sの企画でセネガルの民族楽器であるサバードラム奏者の一族(セネガルではインドのカーストの様な制度で生まれた家により職業が決まる人たちがいます)のドキュメンタリーを撮っていました。今編集中です。

Q

コロナ収束後の世界はどうなっていくと思いますか?

非常事態は変革のチャンスだと思っているので、自分の生活から見直してもう少しサステナブルな生活ができる社会になっていければと思っています。

これからは素晴らしい時代になっていくと信じています。

 

 

Q

ご自身の活動は変わっていくと思いますか?

上にも書きましたが、音楽や創作を再開するいいきっかけになりました。変わっていくと思います。

 

 

 

Q

美味しいテイクアウト / デリバリーなどあれば教えてください。

コロナ後は基本的に自炊なのですが、恋しくなるのはMehringdamm駅前にあるカリーブルストの露店(ドイツのぶっといソーセージを油で揚げたものと、ほっこり揚げたてのぶっといフライドポテトの上に特別配合のケチャップとマヨネーズをぶリュリューっとかけたところに、パラっとカレー粉をフリかけた逸品です。

 

 

Q

こういうのあったらいいなーとかってありますか?

結構自分の選択やペースで生活してるのであんま不満はないですが、政治的にはベーシックインカム(全国民定給制度)っていいなーって笑。

 

 

 

 

この状況(自粛/stayhome/人と直接会えない)みたいな中で何か今までと違うものは見えましたか?

今までと違うことだけでしか無いですね!いいことも悪いことも。上記したとうりです。

 

 

 

 

 

Q

今、どんなサービスがあったらいいと思いますか?

書籍及び漫画スキャン共有プラットフォームが合法で、できたらいいなーと思います。 

 

 

 

Q

今何か告知することやメッセージなどあればお願いします。

娘とお絵描きしながら作ったDj Die soon ( Small but Hard ) Mc Yallah ( Nyege Nyege tapes)のビデオが

Factマガジンで見れます。https://www.factmag.com/2020/04/24/dj-die-soon-mc-yallah-kawo-kada/

 

撮影を予定していたBerlin Atonalという実験音楽のフェスティバルも中止になったり、イベントやフェス系は軒並み中止及び延期ですが、五年くらいお休みしてたDIYのMVの制作を再開しました。

 

今年はNYEGE NYEGE TAPESのビデオを数本作る予定です。

Vimeo https://vimeo.com/doggytastes

 

あとはCEKAIのFM SON 娘が寝たあと夜中にしんみりチョイスしたアンビエントミックスが流れる予定です。

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Hiroo Tanaka / イヌミカク

Born in Tokyo 1983
Tokyo-London-Berlin.
Video editor/ Director.

INSTAGRAM : https://www.instagram.com/doggytastes/

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