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2020年の3月以降、「自粛」とか「STAYHOME」というムードの中でSNSやオンライン通話で誰かと意図的に近況などを話す場を作ることはできますが、今までのように「あそこに行ったらたまたま会ってさ」みたいな偶然的な出会いが起きづらくなっちゃった。(そこが素晴らしいところなのに)

 

[ A.N.D.NOW ]では、日々モノを作ったり遊んだりしている人々に今どんな生活をしていて家で何を考え何を見ているのか。日本はどーなっていくと考えているか、少し話を聞いてみました。芸能人やニュースキャスターや専門家じゃなくって少し距離の近い、みんなの今。

人間は慣れるしいとも簡単に忘れてしまう。これから先の不安定な、だけど必ず来る未来の為に。覚えておきたいことがたくさんあります。

A.N.D.NOW #19人目は、ロンドン在住の映像監督、木村太一。

12歳にして映画監督を目指しロンドンに渡る。The Chemical Brothers,、Knife Party、Sub Focusなど数々のMVを手がける傍ら、自身の映像作品「LOST YOUTH」はBOILER ROOM初の映像作品としてラインナップされ、2019年には森山大道からインスパイアされた作品「Mu」を発表し世界的に注目を集める。「ロンドンで活動する日本人映像監督」はこの混乱を一体どのように切り取り見つめているのか。彼からみた日本は一体どのように映るのか。コロナによる混乱と「blacklivesmatter」に関わる質問をぶつけた。

Mu : 木村太一監督のショートフィルム「Mu」。

戦後最大の詩人と呼ばれた田村隆一氏、また写真家の森山大道氏からインスピレーションを受け「都会に埋もれる欲望やネガティブな感情」、その中に美しさを見つけだし、詩・映像・音楽で表現した作品となっている。

A documentary film about the dark side of Japanese dance culture, Butoh.

Q

お名前と、肩書きなど教えてください。

木村太一です。映像監督です。

Q

新型コロナウィルスによって現在どのように過ごしていますか?

または外出できない間はどのように過ごしていましたか?

ロンドンは日本よりもっと厳しくて、自粛ではなく外出禁止命令が出ていたので、全く外に出れない状態が1−2ヶ月続きました。今は少し落ち着きましたが、禁止命令は続いているので、7月まで外にあまり出れません。

 

編集の仕事が入った時は、朝9時起床、10時仕事開始で22時まで仕事をしています。

 

仕事がない時は、ストイックにゲームか映画を見てゴロゴロしています。基本的に午前11時に起きて朝の5時に寝てます。

 

Q

それはコロナ前とどう変化しましたか? ロンドンの空気感なども教えてください。

僕の生活はほとんど変わってないですね。普段から夜行性なので。

 

 

Q

東京とロンドン両方の文化を知っていると思いますが、ロンドンからみて今の東京はどう見えますか? 

文化って言葉は幅が広すぎるのですが。。。。人を対象に語るとしたら、日本は全体的に無責任な人が多い印象がありますね。何か社会的な問題が起きた時、表に出てる人ほど、キャリアのリスクなとを考えて問題に対する発言を避ける傾向がある様な気がします。snsでも言いましたけど、「沈黙は中立ではなく、愚か者のする行為」だと僕は考えています。これは非常に残念な事で、影響力の持ち腐れな気がします。せっかく人々にもらった影響力を社会の為に使って行って欲しいです。

 

更に、全体的に政治・社会問題・世界事情に対する知識と関心の低さが最近露骨に現れてきている気がします。恐らく国際社会としての歴史が浅いのが原因なのかもしれません。もっと日常で政治・社会問題などを話し合える様になるべきだと僕は感じています。イギリスでパブで飲んでいる時にサッカーのバカ話をしていると思ったら、いきなりEU離脱の話をしたりします。政治や社会問題の事をいろんな人と語る事でコミュニケーションをとるのが、人々の生活に根付いています。だから、パンク・ロック・グライムなど政治的な要素を含んだ音楽が生まれやすいのかもしれません。イギリスでは社会から感じた怒りを作品として表現する、アートの本質がアーティストの中に常にあると思います。これからの時代は正しい情報を自分で見極めて、どんどん自分の知識として吸収していって欲しいです。

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地元のスーパーの外にあるリサイクルゴミ箱。

コロナのピークの時に撮ったもので、何日間も放置されていました

Q

現在ロックダウンは解除され、6月1日から規制緩和しましたがロックダウン中のロンドンの雰囲気と解除後(現在)の雰囲気を教えてください。

コロナの外出禁止令が出たばっかの時、スーパーや郵便局だけは許されていたので、外出するとアジア人なの為なのか物凄い差別的な事を言われたり、いやそうな目で見られました。身の危険を感じたので、ほぼ外に出ないようにスーパーで物凄い大量の食材を買ってストックし時期がありました。個人的に以前に比べてみんなカリカリしてるなーと思います。

 

先程言いましたけど、ロンドンはまだ解除されていないんですが、警告レベルが下がったので今は公園には行けるようになりました。ひなたぼっこ出来て嬉しいです。でも、まだいつ僕たちは外出許可が出るか分からない状況なので、正直不安で一杯ですね。

 

 

Q

監督自身、MVの作品など音楽シーンと近い存在だと思います。クラブやライブハウスは現在どうなっていますか?

(国の取っている保証などもわかれば教えてください) また、今後のカルチャーはどう変化していくと思いますか?

イギリスは保証がある位程度しっかりしているので、日本のクラブやライブハウスみたいにクラウドファンディングなど一切していませんね。僕も日本円で45万ほどもらえました。もちろんそれでも、この状況に苦しんでいるお店や会社がいるのは当たり前ですが。

 

ロンドンの人々は人と会って喋るのが大好きな人ばかりなので、イギリスのクラブカルチャーに関してはあまり変わらないと思います。

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外出禁止命令が緩くなって、少人数の集まりは許されているので、

友達の誕生日を教会の外でピザのテイクアウトで祝いました。

Q

日本ではライブハウス/クラブ共に店を維持するために配信番組などが増えています。イギリスではこの状況から生まれている新たな動きなどありますか?

元々、イギリスは音楽配信に関してはBOILER ROOMが何年も前から配信していたので、さほど新しい動きは感じないです。他にも沢山ストリーミングもやってますし。今はblack lives matterの活動の方が音楽業界も焦点を置いています。新しい動きよりは元に戻って欲しいって気持ちの方がロンドンは強いかもしれません。日本は配信とか新しい取り組みが増えてきて、やっと海外に追いついてきたなっていう印象です。

 

 

Q

直接会うことが難しい世界になってきたことにより映像というものへの需要は高まると思います。映像監督として、映像を撮ることに対する姿勢やモチベーションは変わりましたか? 

やはり自分の事を振り返る時間が増えたので、色々思う所は出てきました。まあ、結論から言うと今年から何年かかけて、映画監督にシフトしていきたいですね。人に雇われて作品を作ることは僕には向いていないと思いました。結局自分の名前が売れる時って、「LOST YOUTH」とか「Mu」の様な自分の作品を発表した時なんですよね。やはり、自分で作品を作って自分のメッセージを伝える事が僕のやりたい事だと再確認しました。11月に日本で初長編を撮るんですが、メンタル的に非常にいいコンディションになったと思います。

 

 

Q

コロナだけでなく現在アメリカではbalcklivesmatterを中心とした運動が激化しています。ロンドンではどのようなムードでしょうか(日本ではほとんどtvの報道に載ってなかったりします)

イギリスではアメリカみたいに、ピースデモを利用して、暴動をする人が今の所いないので安心しています。でも、ブラックカルチャーは非常にロンドンにも浸透しているので、snsを通じて僕を含めて、沢山の人が黒人差別撲滅を訴えています。ただ、ちょっと残念なのが、それに対抗するかのようにAll lives matterと言って唱えている白人も少なくなく問題にはなっています。「黒人だけでじゃなくて全ての人種が大事だろ?」と一部の人が訴えていますが、それは当然な事で、「全ての人種が大事だからこそ、こういう事件が黒人コミュニティーに多く多発してはいけない。差別をしてはいけない。」と今は訴えなければいけない事をちゃんと理解して欲しいですね。

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近所で見たファック ボリス(イギリスの首相)

Q

コロナに加えアメリカの状況と、時代の節目を迎えていますがこの流れの先に木村監督は今のこの状況をどう捉え、どのような未来を想像していますか?

 

未来の事はあまりよくわからないんですが、ヨーロッパでもマスクをして外出する事が当たり前になりそうですね。海外に住んでいると分かると思うんですけど、マスクは公共の場では絶対にしてはいけないんです。してると「ひどい病気を持っている」と‘勘違いされて嫌な扱いをされてました。だけど、今回の件でイギリス人も当たり前のようにみんなマスクしてるんで、花粉症がひどい僕的に外出の時の苦難が減りました。

 

 

Q

インターネットで見つけられるものでオススメのものはありますか ? リンクがあればそれも教えてください。

NETFLIXのマイケルジョーダンのドキュメンタリーは最高でした。

あと、90年台テレビで流れてたラーメン番組を楽しんでます。

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Muのスチール

Q

今、どんなサービスがあったらいいと思いますか?

普通にロンドンに温泉か銭湯ができて欲しいです。多分一生叶わないと思います。

 

Q

読んでいる人に何か告知することやメッセージなどあればお願いします。

 

Black lives matter

Lost youth

「Lost Youth」はリアルな若者たちを捉えた、東京の闇を浮き彫りにする映画。 世界に向けて発信されている日本文化とは異なり、この作品では政治的検閲によって報道が規制されるような視点を描写している。動揺させられるようなシーンや物議を醸す内容も含まれるが、すべて目を背けてはならない現実。 本作はBoiler Roomが初めて配給した映画として、同サービスでの全世界Premierが実施された。

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木村太一 / TAICHI KIMURA

1987年東京生まれ、ロンドン在住。 映画監督を目指し、12歳で単身渡英し映像制作を学ぶ。The Chemical Brothers、Knife Party、 Sub Focus、CHASE& STATUS、SECONDCITYを始めとした、多くの海外アーティスト のドキュメンタリー / MVを発表する。2016年には自主制作短編映画「LOST YOUTH」は BOILER ROOM初の映画上映。 2017年にはデイビッド・リンチがオーナーのパリのプライベートクラブ「SILENCIO」にて招待上映など、海外のメディアで高い評価を受けた。近年は ドキュメンタリー作品も多数制作しApple Music, i-D Magazineにて発表。

http://taichikimura.com/

photo / yokoching

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